マルトリートメントと脳の発達
「うまく話せない」
「考えがまとまらない」
「威圧的な人の前で頭が真っ白になる」
「原因不明の痛みが続いている」
そんな状態に悩む方が、治療院にはたくさん訪れます。
検査では異常なし。だけど、どうにもならないこの不調――実は「心と脳の関係」が深く関わっているかもしれません。
マルトリートメント=「傷つけられる環境」による後天的な影響
「マルトリートメント」とは、子ども時代における不適切な関わりや環境による心身への影響を指します。
明らかな暴力だけではなく、
・親同士の不穏な空気
・継続的な否定や無視
・安心できない家庭環境
こうしたことも、脳の発達に深刻な影響を与えます。
幼少期は、脳が急速に成長する大事な時期。
この時期に過緊張が続くと、血流や酸素供給が不足し、脳の特定部位が十分に育たないまま大人になるケースもあるのです。

生き抜くために張りつめていた「緊張状態」
例えば、家庭内で親が喧嘩ばかりしていたら、子どもは「捨てられるかもしれない」という不安を無意識に感じ続けます。
幼い子どもは自分では生きていけません。
そんな中で、「どうにか生き延びよう」と緊張状態が続きます。
これは病気ではありません。
過酷な環境を生き抜くための、生存戦略だったのです。
「できない」のではなく「しにくい」状態
マルトリートメントによって発達が阻害されると、
・思考の切り替えが遅い
・感情の制御が難しい
・言葉がうまく出てこない
・人間関係がうまく築けない
といった状態が、大人になっても続きます。
でもこれは、「能力がない」わけではありません。
能力を発揮しにくい状態にあるだけなんです。

威圧的な人に会うとフリーズするのはなぜか?
「なんで自分はあの人の前では声が出ないんだろう」
「すぐ頭が真っ白になる」
――それも、過去の記憶とつながっています。
威圧的な言動を受けた瞬間、脳は過去の恐怖体験を再生します。
すると体がフリーズ(硬直)し、思考や行動が止まってしまうのです。
これは「恐怖」による防衛反応であり、脳と体がちゃんと働いている証とも言えるのです。

脳が「痛み」を記憶している
急性の痛み(ケガなど)と、慢性的な痛み(ずっと続くもの)は、脳の異なる場所で処理されています。
慢性的な痛みは、
・過去の痛みの記憶
・感情(イライラ、不安、悲しみ)
と一緒に脳に保存されてしまっていることが多いのです。
一度リンクしてしまうと、感情が引き金になって痛みを再発させることも。
「痛い」→「不安」→「もっと痛く感じる」→「さらに不安」
このループにハマると、簡単には抜け出せなくなります。
だからこそ大切なのは、痛みと感情は別物だと認知することです。
安心感が、脳の機能を取り戻す鍵
脳の機能を安定させるために必要なのは、“安心”の土台をつくることです。
恐怖が支配していると、脳はパフォーマンスを発揮できません。
安心できる環境、人とのつながり、身体のゆるみ――
こうした要素が揃ってはじめて、本来の力が発揮される状態になります。

カウンセリングとコーチングの違い
慢性的にパフォーマンスが発揮できていないとき、人は「満足のいく答え」にたどり着けません。
・頭が回らない
・どうしたらいいかわからない
・仕方なくこの選択をしている
そんな状態では、外からの助け(=カウンセリング的アプローチ)が必要になります。
一方、ある程度の安定があり、「これからどうしていこうか?」と考えられる状態になったときは、コーチング的アプローチが有効です。
答えは、あなたの中に
「どんな人生にしていきたいですか?」
「あなたにとって、大切にしたいことはなんですか?」
そう聞かれて、すぐに答えが出なくてもいいんです。
でも、少しずつ自分の本音に気づき始めたとき、私たちは本来のパフォーマンスを取り戻していきます。
そして、自分で決めた行動がうまくいった経験こそが、“自信”になっていくのです。
最後に
人は、自分で選び、決めて、動いたときにこそ、変われます。
時は戻せなくても、認識は変えられる。
過去のせいにする必要も、未来を諦める必要もありません。
安心を取り戻し、本来のあなたの力を発揮するために、我々はどこまでもサポートします。
