症状の背景にあるものを見つめる

「母も頭痛持ちだったので遺伝ですかね?」
「遺伝なので治らないですよね」

患者さんから、こうした声を聞くことがあります。
確かに、家族に同じ症状があると心配になりますよね。

ですが、症状は遺伝ではありません。
発症の鍵を握っているのは、日々の積み重ね、環境、生活習慣、そして脳の状態です。


痛みは「脳の危険信号」

痛みや不調はある日突然出るわけではありません。

症状の背景には、年単位での「歴史」があります。

栄養状態、睡眠、ストレス、思考のクセ、社会的関係…。
すべてが少しずつ積み重なって、あるとき「症状」として姿を現すのです。

痛みは、脳が発する“危険サイン”のひとつ。

例えば頭痛の場合には、

・血流が過剰なとき、逆に不足しているとき
・脳の神経が過敏になっているとき
・ずっと緊張が抜けないとき

精神的なストレスに限らず、脳の機能そのものが「限界だよ」と訴えている状態なのです。


痛みや病気は“気づきのチャンス”

つらい症状に襲われ「どうにかしたい」「早く治したい」と思うのは当然です。
でも私は、こうも思います。

「病気や痛みは、人生を見直すチャンスでもある」と。

だからこそ、症状を否定したり悪者にするのではなく、「今の体は、何を伝えようとしているんだろう?」と一緒に考えていきたいのです。


原因はひとつじゃない

例えば、腰が痛いからといって、腰だけが悪いとは限りません。
痛い部分は「結果」であり、「原因」はもっと広い範囲にあります。

身体のバランス、神経の働き、脳の状態、心の状態、生活の質…。
それらが崩れることで、いろんなところに不調として表れているのです。

つまり、身体・心・生活の全体を整えることが、根本的な改善への道なのです。


脳が元気な状態を取り戻す

体を回復に導くうえで、最も重要なのは、脳がしっかり休まり、命令を出せる状態にあるかどうか。

神経が常にピリピリしていたり、緊張が抜けなかったりすると、体も回復モードに切り替わりません。

だからこそ、私たちは症状そのものだけを診るのではなく、「脳と体のやり取りがスムーズに行えているか」までを大切にして診ていきます。


一緒にバランスを整える

依存ではなく共存。
一方的に「治してもらう」「指示する」のではなく、お互いが信頼関係を築いて、一緒に整えていくことが大切です。

ただの義務や課題としてではなく、「自分の体を大切にしよう」という意識を持つことが、治癒のスイッチになります。

特に、神経が繊細な方ほど、元に戻るには少し時間がかかるもの。
でもそれは、時間をかけて心身の奥深くから整えていけるという希望でもあります。


小さな変化が、大きな回復へ

脳が少しずつ休まってくると
・よく眠れるようになった
・ごはんがおいしく感じられるようになった
・怒りや不安が和らいできた

…そんな「当たり前のこと」が戻ってきます。
そして、それが本当の回復の兆しです。


最後に

私たちの体には自然治癒力が備わっています。
ほんの少し整えてあげるだけで、自らの力で立て直してくれるのです。

でも反対に、日常の中にマイナス要素(食事、睡眠、ストレスなど)が多いままでは、いくら治療をしても回復は難しい…

だからこそ、症状だけを相手にするのではなく、「その人自身」を診ることを大切にしています。

一緒に、自分らしい健康と人生を取り戻していきましょう。