パニック障害で働けない―「ただの不安」では片づけられない脳の疲れとは ―

「電車に乗れなくなった」
「仕事中、急に息ができなくなった」
「このまま倒れてしまうんじゃないかと思って、外に出られない」

そんなふうに、日常の中でふいに襲ってくる強い不安や動悸に、途方に暮れてはいませんか?

周囲からは「気にしすぎでは?」「心配しすぎだよ」と言われたり、
「また発作が出たらどうしよう」と考えることで、ますます不安が大きくなってしまったり…。

けれど、それはあなたの心が弱いからではありません

目に見えない「脳の疲れ」が、あなたを苦しめている

パニック障害という言葉が少しずつ知られるようになってきた今でも、
「ただの過敏な反応」「ストレスのせい」と受け取られてしまうことがあります。

しかしこの不調の根っこには、実は、脳と神経の“疲弊”と“誤作動”が隠されています。

人混みや会議の場面、電車、エレベーター…
日常では問題ないはずの環境で、なぜこんなに苦しくなるのか。

その理由は、脳が誤って危険信号を出し続けている状態にあるからなのです。

意志や気合いでは止められない“脳の誤作動”

脳には、外部の刺激を「安全か/危険か」に分けて判断する働きがあります。

その中でも「扁桃体」という部分は、過去の恐怖体験やストレスを記憶し、似たような状況に出くわすと、瞬時に「逃げろ!」という信号を出します。

本来であれば、それを「大丈夫」となだめるのが前頭前野という部分。

でも、長期間にわたるストレス、緊張、自己否定…
そういった状態が続くと、前頭前野の働きが弱まり、扁桃体の暴走を止められなくなってしまうのです。

その結果、

  • 突然の動悸や息苦しさ
  • ぐるぐると止まらない不安感
  • 「また発作が起きるかも」という予期不安

といった、意志とは無関係な身体症状が現れ始めます。

ただ薬で抑えるだけでは、根本からの回復は難しい

パニック発作のような症状が続くと、当然ながら仕事や外出が怖くなり、生活の自由がどんどん奪われていきます。

そして「もう働けないかもしれない」と自信を失っていく方も少なくありません。

もちろん、薬が必要なケースもあります。

けれど、“結果”として出ている症状だけを抑えていても、脳や神経の疲れや誤作動を修正しない限り、また同じ状況に苦しむことになってしまいます。

回復のための3つの軸

当院では、パニック障害を「脳の過剰反応」と捉え、
以下の3つの軸から、症状の根本に向き合うアプローチを行っています。


1. 脳と神経の誤作動を整える “神経学的アプローチ”

発作が出やすい状況を避け続けるのではなく、その状況に脳が“安全”と感じられるように、神経回路のバランスを整えていきます。

特に、自律神経と扁桃体の過剰な反応をやわらげ、「発作を起こす前のあなた」に戻れるような調整を行います。

2. ストレスに負けない体を整える “栄養と生活リズムの再構築”

脳が健康な判断をするためには、安定した血糖、睡眠の質、ホルモンバランスが不可欠です。

栄養不足や生活リズムの乱れがあると、脳の判断力が落ち、不安やパニックが起きやすくなります。

食事、睡眠、呼吸、そして休息――
「ごく当たり前」のことを、もう一度丁寧に見直していくことが、不調を手放していくための土台になります。

3. “安心できる自分”を取り戻すための 心のアプローチ

不安をコントロールできない時、その奥には「こうしなければ」「また迷惑をかける」という強い思い込みや、自分への厳しさが隠れていることがあります。

私たちは、その考えを否定したり、無理に変えようとはしません。

ただ、その思いがどこから来ているのか、どうすれば「今の自分」に合ったバランスに戻していけるのか――
一緒に探していきます。

「もう元の生活には戻れない」と感じているあなたへ

「電車に乗れない」「職場に行けない」
そんな状態が続くと、「自分はダメなんじゃないか」と思ってしまうかもしれません。

でも、脳が疲れている時、その“判断”すらも過剰にネガティブになってしまうことがあります。

あなたが感じている不安や怖さは、「弱さ」ではなく、脳と神経からのSOSです。

働けなくなったのは、あなただけの責任ではありません。
だから、必要以上に自分を責めないでください。

あなたの中にある“戻る力”を信じて

私たちは、これまでたくさんの方が「もう無理だと思っていた場所」に戻っていく姿を見てきました。

不安や発作は、あなたのすべてではありません。
それは一部であって、決してあなたの“本質”ではないのです。

回復に必要なのは、「壊れた何かを修理する」ことではなく、本来の働きを取り戻していくこと。

どうか一人で抱え込まず、少しずつでも “安心できる自分” に戻っていく道を歩んでみませんか?

📌 この記事が届いてほしい方

  • パニック障害で働けず、先が見えなくなっている方
  • 薬や休息だけでは、良くなっていく実感が持てない方
  • 原因からしっかりと向き合いたいと感じている方