仕事を休んでも楽にならない─回復を止めている“神経の緊張”

「休職したのに、思ったほど楽にならない」
「仕事から離れたはずなのに、心がずっと緊張したまま」
「このままずっと戻れないんじゃないか…」

そんな思いを、ひとりで抱えていませんか。

本来、休むことは回復のための大事な時間です。
でも実際には、「休んでも楽にならない」という人が少なくありません。

それは、あなたの休み方が間違っているわけでも、
あなたが弱いからでもありません。

回復を止めている“別の原因”が、まだ体の中に残っているだけかもしれません。

体は休んでいても、神経は休めていない

仕事を休むと、確かに「業務そのもの」からは離れられます。
通勤もない、上司もいない、締切もない。

それなのに、

・朝から心臓がドキドキする
・意味もなく不安になる
・音や人の気配に過敏になる
・眠れない、眠っても疲れが取れない

こうした状態が続いてしまうことがあります。

それは、体は休んでいても、神経がずっと「戦闘モード」のままだからです。

神経は「もう安全だ」と判断できていない

人の体には、「安全」「危険」を瞬時に判断する仕組みがあります。
それを担っているのが、脳の扁桃体と、自律神経の働きです。

強いストレス状態が長く続くと、

・怒られる
・責められる
・失敗すると終わる
・迷惑をかけてはいけない

こうした記憶と感情が、神経の奥に染みついてしまいます。

その結果、

頭では「もう仕事は行っていない」と分かっていても、
神経が「まだ危険だ」と判断し続けてしまう

この状態になると、
休んでいても体は一切リラックスできません。

これが、「休んでも回復しない正体」です。

休んでいるのに苦しい人ほど、まじめに生きてきた

休職しても楽にならない人ほど、

・責任感が強い
・我慢するのが当たり前
・期待に応えようと無理をしてきた
・弱音を吐くのが苦手

そんな生き方を長年続けてきた人が多いのです。

だから、休んでいる間も心のどこかで、

「自分だけこんなに休んでいていいのか」
「もっとちゃんとしなきゃ」
「早く戻らなきゃ」

と、自分を追い詰め続けてしまいます。

体は休んでいても、神経が“仕事を続けている状態”なのです。

回復を止めているのは「意志」ではなく「神経の緊張」

「ちゃんと休めば良くなるはず」
「気持ちの問題だから、自分で切り替えなきゃ」

そう言われて、何度も自分を奮い立たせてきたかもしれません。

でも、神経の緊張は、
根性や意志ではゆるみません。

それは、

・長期間のストレス
・慢性的な緊張
・安心できない環境
・自己否定の積み重なり

こうしたものが、神経の反射として固定されてしまった状態だからです。

だから、休職だけでは回復が進まない人がいるのです。

回復のために必要なのは「神経の安心」を取り戻すこと

当院が大切にしているのは、
「気持ちを前向きにすること」ではありません。

神経そのものに「もう大丈夫だ」と教え直すことです。

そのために、私たちは次の3つの軸で整えていきます。

脳と神経の誤作動を整える

過剰に反応し続けている神経のループを、
神経学的アプローチで少しずつ鎮めていきます。

「音にビクッとする」
「人の視線で体が固まる」
そんな反応が、少しずつ弱まっていきます。

栄養と生活リズムで“回復できる体”を支える

神経が回復するには、
血糖・ミネラル・ホルモン・睡眠…などの質が深く関わっています。

どれだけ休んでも疲れが取れないとき、
体の内側が回復を妨げていることも少なくありません。

自分を縛ってきた思考のクセをほどく

「休んではいけない」
「迷惑をかける自分には価値がない」

こうした考えは、あなたを守るために身についたものであって、
本来のあなたを縛るためのものではありません。

少しずつ、自分の心の声に戻っていく作業を重ねていきます。

休職は「終わり」ではなく、「立て直しの入り口」

休んでも楽にならないと、

「自分はもう治らないのかもしれない」
「このままずっと戻れないのかもしれない」

そんな不安が膨らんでしまいますよね。

でも、実際には――
回復のスイッチが、まだ押されていないだけという人がとても多いのです。

神経が安心を取り戻しはじめると、

・息が自然に深くなる
・眠りが少しずつ変わる
・人の声が前ほど怖くなくなる
・未来のことを考えられる日が増える

といった、“目立たないけれど静かな変化”が積み重なっていきます。

最後に

仕事を休んでも楽にならないとき、
一番苦しいのは「先が見えなくなること」かもしれません。

でも、その苦しさは、

あなたが壊れてしまったからではなく、
神経がまだ“戦い続けているだけ”です。

戦いを終えさせてあげること。
それが、本当の回復の始まりになります。

ここから立て直すことは、十分に可能です。
その道を、ひとりで歩かなくて大丈夫です。