「片付けられない」は“心”からのサイン? 〜自己決定力と脳の働き〜
「やらなきゃ」と思ってるのに、体が動かない。
「片付けたい」のに、気づけばまた散らかっている――。
片付けができない状態にあると、多くの人が「自分はだらしない」「意志が弱い」と責めてしまいがちです。でも実は、「片付けられない」には、脳と心の状態が深く関係しています。
この記事では、心理的な視点から、「片付けられない心の背景」をひも解きながら、改善の糸口を考えていきます。

「片付けられない」は、単なる怠けではない
精神的な不調を抱えている方の多くが、「片付けられない」という悩みを口にされます。
✔ どこから手をつければいいかわからない
✔ 片付けようとしても途中で止まってしまう
✔ 部屋を見ては落ち込み、さらに動けなくなる
このような状態は、心の疲労や感情の混乱が関係していることが少なくありません。
片付けは「自己決定」の連続
片付けという行動をよく観察すると、私たちは常に「決める」作業を繰り返しています。
- これは捨てる?残す?
- どこにしまう?どこに置く?
- 優先順位は?後回しでもいい?
これらはすべて、小さな“自己決定”の積み重ね。
つまり片付けには、思考力・判断力・優先順位づけ・集中力といった、脳の「実行機能(Executive Function)」がフル稼働しているのです。

実行機能が落ちると、部屋が散らかる
うつ・適応障害・強いストレス状態にあると、脳の中でも前頭前野と呼ばれる“決断の司令塔”がうまく働かなくなります。
前頭前野は、
- 情報を整理する
- 感情を抑える
- 行動を計画する
といった機能を担っています。
疲労や緊張、不安が続くと、この部分がうまく使えず、考える・動く・決めるといった行動にブレーキがかかってしまうのです。
感情がわからない=選べない
片付けには「これは今の自分に必要か?」という感情的な選択が求められます。
しかし心が疲れていると、自分の感情がよくわからなくなってしまいます。
- 嬉しい/悲しいが鈍くなる
- 何を大事にしたいかわからない
- 決めたはずなのに迷ってしまう
結果、「仕分け」ができず、選べず、手が止まる。
部屋の状態は、まさに心の混乱の鏡ともいえるのです。

小さな決定を取り戻すことから始めよう
当院では、「片付けられない」背景にある神経系の負荷や、感情と判断のズレを丁寧に見つめ直しながら、
- 神経学的アプローチ(脳の誤作動への調整)
- 心理的アプローチ(自己認識・価値観の再整理)
- 生活習慣の見直し(疲労・血糖・栄養面など)
を組み合わせて、“決められる自分”を取り戻す支援を行っています。
片付けは、自己決定力のリハビリ。
それは、心の再起動の第一歩でもあります。

あなたが「動けない」のは、あなたのせいではない
片付けられない自分を責めないでください。
それは、心や脳が「もう限界だよ」と教えてくれているサインかもしれません。
もし今、生活が思うように回らない・片付けができない状態であれば、ぜひ一度ご相談ください。
心と神経の専門的な視点から、今のあなたに必要なサポートを一緒に探していきましょう。