施術の際に手で触れるという事について

こんにちは、副院長の伊藤です。

 当院ではアクティベータという器具を使い施術を行っていきます。アクティベータというのは注射器のような形の器具で体の神経に振動を与えて神経の滞りを整えるという器具です。当院ではアクティベータを使い患者に施術を行っていきます。一般的にはカイロプラクティックは手で施術を行うイメージの方が根強く、初めて見る人は少し驚くかもしれません。私自身も存在は知っていましたが、当院に来るまではアクティベータという物を使った事がありませんでした。

画像の手で持っている物がアクティベータです

 こういった見慣れない施術をしていると、アクティベータと手ではどちらが優れているのか、という事を聞かれたりする事が有ります。私の中では、どちらか一方が優れているという事は無いと考えています。

 手には手でしか出来ない繊細な動きが出来ますが、アクティベータは人間の手では出せない速度で体に振動を与える事が出来ます。ですが、アクティベータでは手のように人に触れた時にその人の体温や筋肉のこわばりを感じる事が出来ません。手も同じように、人がやっているのでアクティベータのように常に一定の力と一定の速度で患者に刺激を与える事が出来なかったりします。手とアクティベータのどちらにも優れている点が有るので、どちらか一方が優れていると考えて片方の選択肢を失くすのは勿体ないと感じたりしています。

 ここからは好みの話になりますが、私自身が手とアクティベータのどちらが好みなのかと言いますと手だったりもします。それは先程書いた通り、手でしか感じられない物や伝えられない物が有るという事と、どちらを突き詰めていきたいのかと考えた時に手の方を突き詰めていきたいと考えているからです。

 そういった考えが有るからなのか、施術をする時は必ず「手で触る」という事をするようにしています。手で触る事は当たり前のように思えますが、アクティベータを使った施術であれば体にあまり触れずに施術を終わらせることが出来ます。ですが、人はロボットではありませんので流れ作業のような施術で終わらせて良いのかと考えてしまいます。これは単純に私自身が患者になって、その施術を受けた時に「良い施術だった」と思えないからです。

 それ以外にも私は「手で触れる」という事自体に意味が有ると思っています。非言語の話になりますが「手で触れる」事で言葉に出来ない、感情や思いと言った物を触れる事で伝えることが出来るのではないかと考えています。

 昔から何かしら体を痛めた時に患部を手でさすったり、子供が寝れない時には手でポンポンと優しくたたいたりして寝かしつけたりしていたと思います。こういった行いにはもしかしたら科学的根拠が有るのかもしれませんが、私たちが無意識の内にやっている事でも有ります。それをする事で「痛みが紛れたり、安心感を得たり」といったある意味では言語にする事が出来ない物が「手で触れる」という事で体験できると思います。

 私自身は、「手で触れる事」で患者さんに寄り添いたいとかそんなに大きな考えは有りません。ただ、我々カイロプラクターが出来る事はかなり限られています。骨折した部分をさする事で骨折を治す事なんて勿論出来ませんし、死んだ細胞に触れる事で再生させるという事も出来ません。

 そういった事が出来ない私が施術をする事で患者に何をしているかと考えた時に思ったのはベタな話ですが「治すキッカケ」を作る事では無いのかなという風に思いました。

 何故その様に思ったのかと言いますと、先程書いた通り治療家が出来る事は限られています。施術をする事で状態が良くなったという事も有るかもしれませんが、その効果を明確に示せる物は無いのです。施術で回復したのか患者さん自身の回復力で良くなったのかは。実際の所は誰にも分かりません。

 そういう事を考えた時に、じゃあ私が施術を通して何をしているのかと言うと「治すキッカケ」を作っているのではという考えに至った訳です。

 こういった私の「治すキッカケを作るという」思いを口に出して患者に届くかと言うと、正直中々受け入れられるモノではありません。患者さんとしては治療院に問題を解決しに来ているのに「治すのはアナタ自身です」と言われたら、治療院なのになにもしないのかと思われる可能性も有ります。こういった考えはある意味非言語的な考えだと思っています。

 そういった言語化できない思いと言うのは「手で触れる」事でなにかしら患者に伝わると思っています。ですので、私は治療と言った意味ではなくそういった非言語的な思いを伝える意味も込めて患者に「手で触れる」という事をしたりしています。

 医師も治療家も患者を診る時に「今以上に悪くしてやろう」と考えて診る人はまずいません。診る時は「今より良い状態に」といった気持ちで接していると思っています。

 そういった思いは器具を通して伝わるのかと言うと、人間はロボットではありませんので手と言う同じ人間が持っている物で接する事でより伝わるのではないかなと思ったりもします。

すこし分かり辛い話かもしれませんが、施術の際は「手で触れる」という事を意識しているというお話でした。