音楽性の違いとカイロの施術の違いは似ている?

こんにちは。副院長の伊藤です。

 突然ですが皆さんは「音楽性の違い」という言葉を聞いた事はあるでしょうか?バンドが解散するときによく聞く言葉ですが、実際はお金や人間関係といった大人の事情で解散する事も有ると聞きます。ですが「音楽性の違い」という言葉を文字通りに受け取った場合に私が思い浮かぶのは「表現の違い」という言葉です。

 音楽には野球やサッカーのように勝敗がありません。どちらの競技にも引き分けと言う概念が有りますが、勝敗を決める明確な基準が有ります。ですが、音楽には正解や不正解は有りません。ロックが好きな人にとってはロックこそが正解かもしれませんし、クラシックが好きな人にとっては好ましい物では無い事も有ります。突き詰めて言うと、音楽には人の数ほど正解や不正解といった物が有るのではと思ったりもします。

 ただ音楽も突き詰めていくと「技術」が必要になっていきます。当然、上手な演奏する為には「技術」が必要にもなりますが、その一方で上手に演奏をする事が良い音楽に繋がるのかというと、これもまた話が変わってきます。

 セックス・ピストルズというバンドをご存知でしょうか。彼らはいわゆるパンクロックの象徴的な存在のバンドです。パンクロックと言うのはいわゆる攻撃的な歌詞やアナーキストのような表現をするジャンルです。そのバンドの走りだった彼らは今で言う所のチンピラや不良のような集まりだったので、楽器の演奏をあまりしていなかった背景が有ります。その為に彼らの演奏を聞くと、音がしっかりと出ていなかったりリズムがよれていて一定でなかったりしますが、彼らの「荒々しい」音楽に多くの若者が魅了されていきました。

 では、彼らが表現してきた「荒々しさ」という表現方法をシンプルに演奏が上手い人たちが演奏してみるとパンクロックの売りでもある「荒々しさ」が抜けて落ち着いた曲調になったりすることもあります。パンクを表現をする為には敢えて音を荒削りに演奏するという技術も必要になったりする事もあるのです。これは、セックス・ピストルズが独自のジャンルを切り開いていった結果その「荒々しさ」こそが、敢えて荒っぽい演奏をするという技術として世の中に浸透していったりしていったりもします。

 我々カイロプラクターの世界も有る意味では「表現の世界」に通じるものが有ると考えています。カイロの世界には多くのメソッドや施術法が有り、それぞれが色々な効果があると言っていますが、どのやり方を選ぶかは施術者の「表現の仕方」によって違ってきます。その施術者が患者にどのような事を与えたいのか、伝えたいのかによって施術の仕方は変わってくると私は考えています。

 そういった意味では音楽に通じるものがあると思っています。こう言ってしまうと語弊が有るかもしれませんが、私にとってカイロプラクティックと言うのは自分を表現するため一つでもあります。音楽で言うところの自分を表現するためにロックやクラシックを選んだといったイメージに近いです。根底にあるのは、非常にベタな表現になりますが「来院者に今より良い状態になって欲しい」という気持ちです。

 そういった気持ちを実現するには医師や科学者など色々な選択肢があるなかで、私はカイロプラクティックというツールを選んでその気持ちを表現しているとも言えます。勿論、カイロプラクティックの世界にも施術の良し悪しは有ると思います。施術が上手い人の所作は見ていて美しいと思えるような、洗練されていて無駄がなく、患者の体にも負担がかからないように効率よく施術をする方もいらっしゃいます。

 ただ、これも難しくて良い施術をしたら患者が良くなるのかというとそれもまた分からない所なのです。施術者の求める良い施術と患者の求める良い施術が違ったり、ドクターと患者の信頼関係によっても施術の効果が変わってきたりもします。少し無理矢理かもしれませんが「音楽性の違い」に似た感覚のようにも思えます。感性や求める表現(施術)によって患者とドクターの関係も変化していくと思っているので、願わくば私と患者の感性が近くより良い関係を作っていけたらと思います。

 音楽性の話題から施術に持って行くという、少し無理矢理感が出てしまったかもしれませんがカイロプラクティックという技術は私にとって患者の体を良くする為の一つ手段だと考えています。より良い施術を提供するためにただ触るという事だけでなく、体をどのように使っていくのかと言う話も施術をしながら出来たらと考えています。

長くなりましたが、また次の機会にお会いしましょう。