身近に自傷行為をする人がいるなら読んでほしい本

『自分を傷つけずにはいられない 〜自傷から回復するためのヒント〜』を読みました。

本書は、長年、自傷の問題に関わってきた著者が、「自傷行為の当事者に向けて、これまで診察室で伝えてきた、あるいは伝えたいと思った事柄」をやさしく語った本です。自傷行為を誰にも打ち明けられずにひとり悩んでいる人、援助を求めたことはあるけれどもかえって傷つく結果になってしまった人、身近に自傷する人がいて「自分にできることは何か」と考えてる人たちに向けて、書かれました。前半では自傷についての考え方、後半では実践編として、どうしたら、回復することができるのか(自分の行為の観察、衝動のコントロール、生活習慣について、精神科にかかるときのアドバイスなど)を具体的に説明。これまでになかった回復の手引き。

書籍説明より

私自身、中2から長年リストカットをしてきた自傷当事者ですが、この本を読んで最初に感じたのは、当事者ではない医師がここまで気持ちを理解して言語化しているのは凄いな…ということ。

レビューでも
「この先生もリストカットしているのか!?と思う程リアルに当事者の気持ちを理解している素晴らしい医師」
「リスカ当事者の自分にとって、かけて欲しかった言葉がたくさん詰まっていました」
「私が自傷を通して思っていること、感じていることは全て書いてあります」
といった声がたくさんありました。

第1章より引用

自傷する人はおそらく死ぬための手段として自傷をしているわけではないということです。自傷することで死ねるとは思ってはいません。ときどき自傷する人のことを「本当のところ、あいつは死ぬ気なんかないんだよ」などとわかったような口調で批判する人がいますが、それはまあその通りです。自傷する人は、そもそもの最初から「その行動で死のう」などとは考えていません。むしろ「それくらいで死ぬことはない」と予測して、その行動に及んでいると理解すべきなのです。

『自分を傷つけずにはいられない 〜自傷から回復するためのヒント〜』p20

きちんとした学問的な方法で「自傷は周囲の関心を集めるために行われる」ということを証明した研究は、古今東西を見渡してもどこにもありません。それどころか、信頼できる研究は「繰り返される自傷の約96パーセントはひとりぼっちの状況で行われ、しかも、行ったことは誰にも報告されない」ということを明らかにしています。

『自分を傷つけずにはいられない 〜自傷から回復するためのヒント〜』p21

自傷する人たちの多くは、誰の助けも借りずに、誰にも相談せずに、自分一人でその辛い気持ちを解決しようとする傾向があります。

『自分を傷つけずにはいられない 〜自傷から回復するためのヒント〜』p23

ここまでの記述だけでも、当事者とそうでない人とのズレを適切に書いてくれていて、当事者としては本当に安心して読める本だと感じます。

経験から言えること

ちなみに…私も「リストカットでは死ねない」と思っていたし、死ぬなら別の方法で、と考えていました。

※以下、生々しい表現がありますので、苦手な方はここで閉じてください。

しかしある時、普段通りに自傷したところで太い脈が見え、血=安心感だったので「ここを切ったらたくさん血が出そう」と思い、切りました。
すると噴水のように血が飛び出し、しばらくすると強い吐き気がしてきました。
死ぬつもりではなかったため、この吐き気は朝まで耐えられそうにない、と感じて自ら救急車を呼びました。(一人暮らしだったので)
救急搬送された先で縫合処置を受け、対応してくれた医師に「あと5分遅かったら助からなかったよ」と言われました。

なのでこの本にもあるように
・リストカットでは死ねない
・「死にたい」と言ってる人は死なない
と思って軽く見るのは危険だなと感じます。。

回復するヒント

後半には、自傷のパターンを観察することや生活習慣の見直し、精神科にかかる場合のポイントなど、実践の提案がまとめられています。
心身ともに疲れ切って判断力の鈍っている当事者にとっては、細かいポイントが提示されているのはありがたいなと思います。

本書にもありますが、その中でも「イイとこ取り」をすればいいのです。
無理にやる必要はないし、できない自分を責める必要はもちろんないし、「やってみようかな」と感じたものだけ採用すればいいと思います。

当事者もですが、個人的には周りの支援者に読んでほしい一冊です。

『自分を傷つけずにはいられない 〜自傷から回復するためのヒント〜』

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第Ⅰ部 自分を傷つける生き方を理解する

第1章 死ぬためじゃないし、アピールのためでもない
第2章 「鎮痛薬」としての自傷
第3章 それで本当に問題は解決していますか?
第4章 「死への迂回路」としての自傷
第5章 「嫌なことを忘れたい」ー物質乱用・依存と過量服薬
第6章 「食べるのがこわい」「食べるのがとまらない」ー摂食障害
第7章 自分を傷つける関係性

第Ⅱ部 自分を傷つける生き方から回復する

第8章 自傷の状況を観察する
第9章 自傷にいたるパターンと対処法
第10章 現在の生活を見直す
第11章 もしも精神科医にかかるなら
第12章 自分を傷つける生き方から回復するためのヒント